『ラブ ゴーゴー』 室井佑月 / 文春ネスコ

可愛い女は、ゲームの途中。


室井佑月。ミスコン荒らしとして知られ、レースクイーン、売れないタレント、銀座ホステス等を経て、現在は小説家。高橋源一郎と不倫の末、彼の4番目の妻になった女。愛嬌のある美人で、胸には200ccくらいの生理食塩水が入っている・・・

作家である前に女であり、文才よりも前にキャラがきわだつノリノリエッセイ集。客を自分のファンにすべく奮闘したホステス時代の話や、陰毛で始まり陰毛に終わったというレースクイーン時代の話、二人目の子づくりのためにどんなふうにセックスしているのかという現在進行形の話まで、まさに、あけっぴろげのネタ人生。不倫からスタートし、「妻」となり「作家」となり「母」となった女の、絵に描いたような一発逆転劇だが、彼女はそれらの肩書きに安住していない。見栄や妥協を指向しない彼女にとって、人生は、いつまでもゲームの途中。女を売りにしているというよりは、天真爛漫な性格がむきだしになっているというニュアンスが強く、何を書いても嫌味がない。

たとえば男の浮気に対して、彼女はたいそう厳しい。「あたしとセックスしてそのことを『浮気』という言葉で片づける男がいたら、あたしはその男を殺す」とタンカを切り、「浮気を悟ったら、やっぱり別れる。女を磨いて出直す方が早いもの」と潔い。腹いせに別の男と遊んだりしてますますドツボにはまってしまうようなナイーブな女たちは、「室井流恋愛指南」を読んで元気を出すべきだろう。彼女は決して二股をかけたりしない。好きな男がいれば、そいつを完璧に振り向かせるために捨て身でがんばり、だめなら次へいく。実にシンプルで正しい。

コンプレックス抜きに、女の舞台裏をあっけらかんと語れる才能は、デフレの世の中に活力と希望をもたらすにちがいない(ほんとか?)。陰鬱な読み物が面白くないという意味では全くないけれど、現実の女として魅力的なのは、やっぱりこういうヤツなんだろうなーって、おやじみたいな感想をつぶやいてしまうわけです。

最後のエッセイ(「婦人公論」掲載)は、かなりマジ入ってる。出産した彼女は、田舎にいる母と行方不明だった父を自宅に呼び寄せ、笑いいっぱいの5人家族となる。赤ん坊のおかげで両親まで幸せになっちゃうのだ。しかし、この幸せは、不倫からはじまり、たくさんの人に迷惑をかけた結果であることを彼女は忘れない。だからこそ、馬鹿みたいに明るい家庭が必要なのだという。何人も子供をつくって、もっと笑いたいという。結婚前は、互いの寂しさを埋めるためのセックスだったのが、今は毎日をもっと楽しくするためのセックスなのだという。

ものすごく健全だ。いい話だ。よかったじゃないか。でも、そこまでにしておいて。結論は出さないで。お願い! 彼女には、いつまでも、ラブゴーゴーな可愛い女でいてほしいから。説教くさいおばさんにだけは、なってほしくないと思うから。
2001-04-20