2015年6月7日、J-WAVEの番組「TOKYO REAL-EYES」がプロデュースする102回目のライヴ・イベントがおこなわれた。会場は、1984年8月4日の反核コンサートで10代の尾崎豊が7mの照明台から飛び降りて骨折するなど、数々の伝説をもつロックの殿堂、日比谷野外音楽堂。
軽装備で足を運べるアクセスの良さがうれしい。お天気がよく、風が肌に心地よい。飛ぶように売れていくビールが喉に心地よい。藤田琢己のMCが耳に心地よい。梅雨入りの前日、官庁街の森で楽しむ野外フェスは、お台場の海で楽しむスタンドアップパドル・サーフィンのようなもの? それとも、大手町の摩天楼で楽しむアマンスパのようなもの?
出演バンドは「LEGO BIG MORL」「WHITE ASH」「SHERBETS」「The Birthday」。
LEGO BIG MORLの新曲『Strike a Bell』は、体を直撃する重低音と、大気に溶けてゆくディレイの効いた高温のミックスが完璧すぎてやばい。これほどストレスのない環境でこれほど耳あたりのいい音を聴いていたら思考が停止してしまう。
WHITE ASHのボーカル&ギター、のび太は、野音初ライブであることをアピール。あまりにフレッシュなパフォーマンスは、イギリスのインディーズバンドみたいに見えた。瞬間、私はイングランドのグラストンベリー・フェスの会場にいた。
SHERBETSの『グレープジュース』の辺りから陽が落ち、いわゆるマジックアワーに突入。こんなにも不条理な世界に音楽が調和している奇跡。デストピアのダークファンタジーが炸裂し『Touch Your Shoulder(君の肩にふれて)』で即死。
夜はThe Birthdayがさらった。チバユウスケは、ミスしても空を指差し「さっき飛行機飛んでたよ。見てたら間違えちゃった」と余裕。「まだ、やってもいいんだってさ」とアンコールを2曲。『くそったれの世界』に『涙がこぼれそう』。
「10年もライヴ・イベントをやっていると、こんなご褒美みたいな夜がある」
「ここから見える景色、絶景です。1人でも欠けていたらこの風景はなかった」
藤田琢己はそんなふうに言っていた。きれいごとみたいな言葉を、きれいごとではなく、観客に響かせてしまった。