『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』 本広克行(監督) /

踊る大組織。


オープンしたばかりのルイ・ヴィトン六本木ヒルズ店の混雑ぶりはただごとではなかったが、そのほぼ正面に位置するヴァージンシネマズ六本木のプレミアスクリーンはがらがらだった。

動員数が既に1000万人を突破したというこの映画をたった10人程度で鑑賞するのは寂しすぎる―と私が感じたのは、満席の大劇場で見た5年前の前作を思い出したからだった。その時は、上映中に携帯の着メロが4種類くらい鳴った。しんとしたシーンでオーソドックスな着信音がステップトーンで音量を上げながら場内に響きわたった時は、本気で演出の一部かと勘違いしたものだ。映画を観ているというよりは、大勢でわいわいテレビを見ているような雰囲気が新鮮だった。

しかし、寂しさを感じた本当の理由は、この映画が組織をテーマにした作品だからだと思う。

本店(警視庁)vs所轄(湾岸署)という図式がメインディッシュであることは相変わらずだが、今回は、そういう「軍隊みたいな組織」に対抗する集団が現れる。

だからといって、組織のもつ根本的な問題が追及されるということはなく、逆にメリットや楽しさが強調されるばかりだ。組織内における上層部への不満は具体的にアピールされるものの、組織外追放(リストラ)の深刻なリアリティは描かれないし、本気で組織を恨んでいるはずの人間が吐き出すセリフにも迫力はない。つまり、この映画においては、警察という組織内の内輪もめのほうが圧倒的に面白いのだ。進化し続けるお台場という街を舞台に、情報(警視庁)vs現場(湾岸署)の対立の構図が冴える。

脚本家の君塚良一は、ずっとフリーでやってきた人だという。つまり、これは、会社組織に属したことのない人が客観的な取材にもとづいてつくったお話なのだ。大変なことも多そうだけど一人でいるよりは心強いし楽しそうだよなという視点、上からの命令が絶対の中でロマンを持ち続けている人が組織を支えているんだよなという視点が、この作品を貫いていると思う。

織田裕二も深津絵里も水野美紀も柳葉敏郎もユースケ・サンタマリアも小泉孝太郎も、皆、これがいちばんハマリ役なんじゃないか?と感じさせるような輝き方で、それぞれのキャラクターを演じている。スタッフの頑張りや旺盛なサービス心も伝わってきて、この映画自体が理想的な組織の産物であるかのように見えてくる。

で、さらに、クレジットの中に知っている名前や企業名を発見したりするものだから、平日のこんな時間にワインを飲みながら映画なんか見てないで仕事しなくちゃ!という痛い気分にさせられるのであった。

*全国各地で上映中
2003-09-16