成功しても失敗しても、彼女は輝く。
私はハッピーエンドが嫌いだ。となると、タイトルとラスト1行があまりに予定調和なこの本は、いかがなものか?ということになる。だいたい、タイトルを見ただけで「iモードという一応の成功をおさめた事件」に関する話であることは明らかなのだ。
それでも私は、この本を興味深い私小説として読んだ。一見「困難を乗り越えてiモードを成功に導いた女性の話」だが、そこから浮かびあがるのは「たとえ成功しなかったとしても、めげなかったであろう女」の姿だ。松永真理は、他人の評価の中で生きていない。「自分が納得できているか?」というのが彼女の基準だ。だから、仕事の区切りがつけば、組織を去っていく。
それにしても、これほど大変な思いをしなければならない「仕事」って何だろう?と、空しくなってくるのも事実。読後感は、ちっともハッピーエンドではないのだ。
この本の最大の美点は、iモードの宣伝になっていないところである。むしろ「iモードって大丈夫なの?」とネガティブな印象すら抱いた。長い目でみると重要な部分が、あっさり妥協されているのである。そして、それが「期間限定の仕事の空しさ」にもつながる。
しかし、彼女は、ちっとも空しさなんて感じていないようだ。いつだって、自分が納得できることを、納得するようにやりとげているからだ。iモードはいまいちでも、松永真理は輝き続ける。
2000-10-23