『英国式占星術』 ジョナサン・ケイナー / 説話社

2000万人が注目する言葉とは?


人間を12星座に分類するなんて馬鹿らしい、って気持ちがどっかにある。だから私は雑誌の星占いなんて読まないのだけど、ハーパース・バザー誌に連載されているジョナサン・ケイナーのページだけは例外だ。彼はイギリスで最も権威ある占星術師だそうで、世界中に2000万人の読者を有し、ウェブサイトには毎日6万人がアクセスするという。

だまされたと思って、単行本まで読んでみた。太陽の位置で占う定番の12星座占いに加え、月、火星、金星の位置関係により、自分自身や知人たちの表の顔、裏の顔が明らかになり、14の相性診断テストがディープに展開されていく。構成もよく考えられており、自分が主役のミステリーをひもとくような楽しさがある。

そして.....どうひいきめに読んでも当たっている! だが、彼の占いの本質は、当たることですらない。魅力の秘密は文体にあり、一度読めばシビれてしまうか笑ってしまうかのどちらかだ。他の占星術師との違いは、想像力の豊かさだと思う。具体的な記述は普遍的な事象につながっており、抽象的な記述は具体的な人生に還元されていく。読んでいるだけで宇宙との一体感が得られ、限りない希望がわいてくる。

たとえば、生まれた時、月が獅子座にあった私という人間に対してはこんな感じ。「あなたは態度が大仰ですし、利口ぶるところがありますし、あらゆる場面で主役になりたがります」........きっつーい!! だけどその後にこう続く。「しかし、同時に稀に見るほど親切で、温かくて、寛大で、純粋でもあります。それだけで千の罪を許されるほどです」........こう言われると、悪い気がしないではないか(笑)。

「(中略)批判を恐れるあまり、善意のよきアドバイスを無視します。うっかりそのアドバイスに従って、バカのように見えるのを避けんがためです」の後にはこう続く。「誤解しないでください。あなたが始終こうだと言うつもりはまったくありません。月の周期があなたに不利に働くときにこんな状態になりうる、というだけの話です。私が無情にも以上のようなことを指摘したのは、不安を建設的に処理する能力があなたの中に備わっているからにほかなりません」.........要するに、とっても教育的なのだ。

この本が教えてくれるのは、パーソナル・コミュニケーションの方法論なのかもしれない。占いや言葉は、他人を嫌な気持ちにさせるためのツールではないということ。説教なんて、誰も聞きたくないのだから。

他者への思いやりと本質への洞察力。そんな彼の資質にこそ、学ぶべきものはある。だから、うまく気持ちが伝わらないアイツのことを、この本でこっそり調べたりした場合なども、自分を前向きに反省しながら、素直に相手を尊重しようって気になってくる。意外な視点を発見して、ふっと楽になれる。どうして当たってるんだろう? どうして面白いんだろう?って考えるだけでも快楽。

日本版のウェブサイトでは、12星座の「週間予報」のほか「2001年の恋愛予報」が本日アップされた。
http://www.cainer.com/japan
2001-01-12